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太平洋戦争を様々な立場から描いたアニメンタリー「決断」が非常に面白かった

 last update 2022年4月28日
Catie Drew / Public Domain / library from U.S. Department of Transpotation

そんな時間は無いはずなのに最近ハマってしまい、若干の大人失格感を醸し出す原因となった、とある映像作品を紹介しましょう。

戦争モノの長大アニメ作品「決断」です。

かなりの時間泥棒なので、それなりに覚悟して見たほうが良いわけですが、でもまぁ、それくらいの価値がある作品だったので、ウチにしては珍しく、この手のものをオススメしてみます。

ちなみに管理人はミリタリ方面にはさほど興味はない、ハズなのですが、「艦これ」にどっぷりハマっていた関係で、戦艦や空母など、軍艦について調べる機会が増えまして。で、そんな最中に見つけた動画だったりします。

1970年の戦争アニメンタリー「決断」

「決断」は、今を遡ること50年以上前、1970年当時の「竜の子プロダクション」、現在のタツノコプロが制作した「アニメンタリー」作品です。

ちなみに「アニメンタリー」とは、「アニメ」+「ドキュメンタリー」の造語だそうで。記録映像的なアニメを目指しましたよー。という事のようです。

作品の舞台は太平洋戦争。軍や政府リーダー達の「決断」が戦局・政局に与えた影響、を主題としつつも、日米両軍の現場指揮官や兵士のミクロな視点・機微も交えて描いており、精力的でかなり盛りだくさんな内容になっています。

えーと、これって…

基本的には DVD-BOX や Blue-ray で見る感じにはなるとは思いますが、現在では dアニメストア for Prime Video でも見ることができます。

(dアニメストアは有料。ただし、30日無料体験があります)

以前は YouTube にもアップされていましたが、権利的に問題があったようで現在は削除されています。

最後まで見てしまうとうっかり手元に残しておきたくなる名作です。古い作品ですが、終戦60周年記念の折に公式 DVD-BOX が、また、終戦70周年記念の際にはHDネガテレシネ・リマスター版のBlu-ray版も公開されています。

タツノコプロ公式サイトはこちら。

この手の作品は、制作側の思想で偏った内容になりがちですが、そんな中「決断」は、まぁ、普通の許容度を持った人なら、左右どちら寄りの人でもまぁ7割は見られるような匙加減で作ってある感じがします。

逆に言えば、どちら寄りの人が見ても3割はイラっとする部分があるかもしれない。という事ではありますが、でも、最後まで見れば良い作品だった。と思ってもらえるのではないでしょうか。

史実と異なる部分やツッコミどころも多少はある気はしますが、こういう作品がある。という事は、それだけで意義ある事と思います。

ストーリーとか

ストーリーもなにも、ドキュメンタリーを標榜するくらいですから、太平洋戦争と同じ流れで物語は展開してゆきます。

具体的には、真珠湾奇襲から始まり、ミッドウェー海戦、シンガポール攻略、香港攻略、マレー沖海戦、珊瑚海海戦、ジャワ攻略、バターン・コレヒドール攻略、第一次ソロモン海戦、キスカ島撤退、特攻隊の誕生、山本五十六の死、ルンガ沖夜戦、マリアナ沖夜戦、レイテ沖海戦、硫黄島作戦、大和沈没と連合艦隊の最後、原爆投下、玉音放送。と、太平洋戦争を開戦から終戦まで一通りなめていく感じです。

タイトルだけ聞いても、全部見るにはかなり時間がかかりそう…と、分かってもらえそうです。

Vector illustration of various Warships.

当初は破竹の勢いで侵攻を進める日本帝国海軍ですが、戦略・戦術のミスや運命のいたずら、空母軽視の姿勢などが祟って、戦局は徐々に暗転。

もともと国力差が大きい日米間の戦いという事で、この戦争自体に無理があったわけですが、その上、早期決着に望みをかけたミッドウェー海戦で4隻の航空母艦を失ってしまった事が後々にまで尾を引きます。

また、3隻の航空母艦を失い、事実上、日米双方が対等に戦える最後の戦いとなってしまったマリアナ沖海戦など、戦局を決する戦いで、日本側は敗北を喫しました。

今作では、そういった大局的な視点だけでなく、戦いの中で指揮官や戦闘員がとった細かな判断や行動にもフォーカスしています。

例えば、レイテ沖で攻撃機から狙い撃ちにされ、無残な姿となった武蔵と凄惨な艦内の様子、そして乗務員の命を守るべく独断で退艦命令を出した大尉と、それを指揮官がどう受け入れたのか、などの細かな機微までが描写されており、このような「指揮官の決断」とそれが及ぼした影響、というミクロとマクロの絡み合いの描写が本作の醍醐味の1つと言えるでしょう。

また、悲壮感漂う硫黄島作戦や特攻隊の誕生、どうにもならない戦局の中で海上特攻する戦艦「大和」の姿などの「影」も当初の快進撃と等しく描かれているのも印象的です。

その他諸々は書き始めるとキリがないので、終戦判断のところだけちょっと詳しく書くと、「日本の全人口が第一線的軍事目標であり殲滅対象である」と、米国側情報主任が宣言した、との情報が流れる中、日本軍の司令官の中には本土決戦に向け、足手まといになる老人・女など自国の民間人を邪魔者扱いする者がいる、との噂も流れるなど、無辜の国民が日米どちらからも見放されたところに、広島、長崎へ原子爆弾が投下されます。

もはや亡国は秒読み、という段になり、ご聖断を仰ぐべく御前会議が行われ、ポツダム宣言受諾、無条件降伏へと流れる…のですが、なんと、玉音放送を録音したレコードを放送するまでの間にも、軍部の介入があったりと、なかなか一筋縄ではいきません。

という感じ。

日頃からこっち方面に関して思う所のある人が見れば、何かしらモヤモヤとした感情が沸き起こってくること請け合い。そんな作品に仕上がっています。

また、ちょっと逸れますが、「艦これ」をやってると各所で耳にするようなキーワードが出てくるのもお楽しみポイントかもしれず。

いや、楽しむとか言ったらアレなお話なのかもですけどね。

でもまぁ、例えば、キスカ島撤退の「帰ろう、帰ればまた来られるからな」的な名言とか、どこかで聞いたことがあるような艦船の名前がたくさん出てきたりとか、「艦これ」のサーバー名でお馴染みの地名がそこここで出てきたり、とかとか。

不謹慎どうこうといった話も出てきそうではありますが、でもまぁ、耳にしたことがある単語が出てこれば、僕みたくこっち方面には興味の無かった人でも見てみよう、という気にもなるわけで、そういう意味では悪い話しばかりでもなさそうに思います。

制作時代が古いこともあってか、登場人物の見た目が揃いも揃って皆、故「水野晴郎」氏似となっており、興味が薄い章ではダレる部分もありましたが、日本人ならこの戦争自体、何かしら思うところのある題材でしょうし、また、細かな描写がドラマ性を感じさせてくれる事、また、後半からは若干の実写も交えて実感を沸かせてくれるといった事もあり、全体を通して、見る者を引き込んで複雑な感情を沸き立たせてくれる名作になっていると思います。

この作品を見て僕が思う事

戦争は、政治家や軍部だけでなく、様々な立場の一般市民までをも巻き込みますが、本作では、様々な立場の人々の「多視点」が絡み合いながら時代が動き、そして、その時代にまた人々が飲みこまれてゆく複雑な様も描かれており、作品に深みを与えています。

これは私の偏見かもしれませんが、そういった描写を見るに、正義も視点も割とひとつで、そこから外れるとちょっと変わったもの、という、悪く言えば「狭い東海道の常識」に囚われがちな日本には珍しい作品だなぁ。という感想も抱いたりするわけです。

さて、だいたいいつも一言多い僕ですから、戦争から少し離れますが、好きなことを書かせてもらいます。

「死ねば仏」で、仏さんを悪くは言えない風潮がより強くなってきたご時世ではございますが、しかしまぁ、兎にも角にも死んでカタをつけよう。という方々が多く描かれているのは気にかかる部分でして。

人の育成には大変な時間がかかるものですし、また、育てた側の人の思いだって、相当なものがあるのが普通です。

そういう「人」を蔑ろにし、使い捨てにし、目先の利益や思惑、細かいやりくりに明け暮れながら、全体としてジリ貧になってゆく様は、昨今の本邦にも文化としてしっかり引き継がれているのではないか、と思えて仕方なく、どーにもこーにもです。

当時の日本人(というかアジア人全体かもしれませんが)は原爆投下の対象にされてしまう程度にはお安い存在だったのかもしれませんが、ご先祖・先代が残した輝かしい復興の成果のおかげもあり、現代の日本人は「お高い」存在となりました。

そうでなくとも、人の経験は国にとって貴重なものであり、その経験を元により良くなろう、良くしていこう、という意思は誰もが持つ崇高なモノであると私は信じています。

視点の多さは、それ自体に価値があります。

同じ視点を全員が一丸となって持つ事で生まれる強さ、というものも無いとは言いませんが、集団が大きな間違いを犯さないためには集団に内在する異なる意見にも大いに意味はあり、その視点の数を活かせない集団というのは、特に、複雑かつリスクのある環境においては、大変に不幸な事であるなぁ。とは思うわけであります。

そしてこれは、昨今の本邦においても言える事なのではないか、と私は感じるのです。

許容できない異なる意見、というモノは、個々人から見れば必ずあります。

しかし、そういった意見をお互いに言いあえる自由。は、たとえ意見が違えども、お互いに守りあい、保障していかなければならない事であり、それはきっと、我々という集団が、集団として長生きするのに必要な事だと思うのです。

私はこの点において、昨今の風潮を危ぶんでいます。

時は流れ、社会は複雑化しました。それに伴いリスクは増し、成果を得るのに必要な資本なり労力なりは増加しました。文明が進歩したからです。

ひとりでできない事が多い世の中ならば、人と人とがつながらなければならない機会も必然的に多くなります。

そういう中にあっては、我々日本人の「他の視点に無関心な文化」も変わらないといけない時が来ているのかもしれません。

(※この文章は2013年に公開されましたが、その後、加筆・修正を加えております。)

<Wikipedia 関連項目>

関連サイト

※見出し画像は作品とは直接的な関係はありません。

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この記事へのコメント(3件)

  1. なおぼん says:

    9年前

    アニメンタリー決断で引っ掛けて来ました。
    あたしの世代のアニメですわ。
    当時〈1970年代)の男の子とか、観てましたね。
    男の子って軍艦の名前を良く知ってましたね。
    難しい漢字のね。
    今は「艦これ」ですか・・・萌系ですね。
    少女と軍艦・・・あたしも年取ったのか、よく理解できませんです。

  2. たまお says:

    4年前

    2019年6月日本映画チャンネルにて放映中の物を見て、他者
    感想に興味がわき拝見致しました。本編ではありませんが、原子爆弾を落とした件について思うところが有りましたので一言添えさせてください。日本の都市の殆どを焼き払った、、軍事基地以外への空襲は、焼夷弾が余ったから行われました。アメリカに持ち帰るのが大変だから使ってしまえという行為です。ただ、被害国が白人国家でも行われたと思います。彼らは高度高く飛ぶ爆撃機などで余った爆弾を海に捨てます、下に味方の飛行機が飛んでいるかもしれないのに落として捨てます。核爆弾は戦争を終らせるために用いられました、怖いのはむしろ余った焼夷弾や時限弾だったのです。

  3. みき says:

    2年前

    題材、絵柄共に右翼チックな臭いがして、興味ありつつ見るのを躊躇いましたが、右左どちらよりでもない方の感想と、理路整然としていて至極真っ当なご意見を拝読して、やはり見てみようと思いました。
    最近は保守の方々のご先祖様を悪く言うなという論調の圧が強くて辟易しますが、本当に貴方の仰るとおりだと思います。

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