ソーシャルグラフはもうキャリアの手の届く所に無い。忘れられた音声通話

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タイミング的にはちょっと遅くなりましたが、新料金プラン、2014年夏モデル、VoLTE の発表など、ひと通り出揃ったドコモの新戦略を俯瞰して、個人的に思うところを徒然に書かせていただきます。

「20円/30秒(税別)」時代が、ソーシャルグラフをドコモから取り上げた

Xi 時代は、それまでの FOMA 時代と比べると「音声通話暗黒の時代」とも言える時代でした。

たった1時間の通話で2,500円以上もかかってしまう。「20円/30秒(税別)」という通話プランに一本化された Xi の料金体系は、コストコンシャスなユーザーに音声通話を忌避する十分な動機を与えてしまいました。

そして、キャリアの音声通話をほとんど使わずとも、友人や恋人、家族程度なら十分コミュニケーションできる、という事実を認識させる機会を作ってしまいました。

2013年度末時点のドコモの契約数全体に占める Xi 契約数の割合は、3分の1超となっています。

私も最近は、LINE、Google ハングアウト、Gmail、050 PLUSしか使わない状態になり、もう随分の時間が経っています。

今はまだ、全員がそういう行動パターンになっているとは思いませんが、それでも、ドコモの契約者数のうちのおよそ3分の1が、この通話料金水準でスマホを使っている。という事実は、無視しがたい事と思います。

かなり弱くなった「電話帳」アプリの位置づけ

まずは「電話帳」を開いて、そこからメールや通話をする。

そんな時代はとうに去り、ある程度スマホに慣れた人であれば、まず最初に Twitter なり LINE なりのアプリを起動して、そのアプリから連絡先を選ぶ。というふうにユーザーの動線は大きく変わってしまいました。

それはハングアウトであれ、Facebook であれ同じです。(各ソーシャルメディアの連絡先と電話帳とを束ねるアプリもありますけど、あの手のって、むしろ使いにくいと思ってます。)

ユーザーは、特性ごとにそれぞれの連絡方法を使い分けており、それぞれのSNSごとにソーシャルグラフが形成されています。

今、それらのメディアは、ユーザーから並列に捉えられており、その中のひとつとして、キャリアの音声通話、は戦えているのか。というのが、ここで私が投げかける疑問であります。

もちろん、お年寄り相手や業務では、まだまだ音声通話を使う機会もあるでしょう。

友達や兄弟など、個人同士のやりとりがこの世のすべてではない事は確かです、が、しかし、「連絡手段の常識」は、パーソナルユースから文化として生まれ出てくる側面もありますので、音声通話を取り巻く現状の空気感は、かなり危うい状況なのではないか。とも思うのです。

Android の場合、電話帳は Google クラウドに Sync させている場合がほとんどでしょうから、Google アカウントを引き継げば、昔からの流れで電話帳の中身は登録されてはいるでしょうが、スマホにおいて、それがどれほど使われているのか、という切り口で見れば、ソーシャルグラフはもう、キャリアの手の届く所には無いのではないか。というのが、私の感じる所です。

キャリアが、「30秒あたり20円(税別)」という通話料設定で失ってしまったのは、この、活きたソーシャルグラフなのではないか。と思うのです。

「キャリア自身が作った時代」に逆行するドコモの料金施策

各所で報じられているとおり、今回、ドコモは Xi の基本料金を上げ、代わりに音声通話をかけ放題とする施策を打ちます。反面、ギガバイトあたりのパケット料金は値上げとなるわけですが、これは、現代の若い人の利用パターンに反した施策なのではないか。というのが、私の見解です。

連絡手段が多様化した現代においては、「キャリアの音声通話」は、たくさんある連絡手段のひとつでしかありません。

そして、もう、ここまで来てしまうと、スマホを持つ主目的が「キャリアの音声通話」である。という時代でもないだろう。とも思うのです。

とはいえ、ドコモさんは我が国の旗艦キャリアとして、時代の流れを作っていける立場におありですから、未来は私の思うようにはならない可能性もあります。が、しかし、少なくとも、現状のユーザーの使い方とは合わない施策だ。ということははっきりと言える事であります。

「電話番号+キャリア通話」なソーシャルグラフ整備が必要なのではないか

キャリアが本当に音声通話の利用を促進したいのであれば、例えば、国内の主要キャリアが共同で、電話帳をクラウド管理するプラットフォームを整備し、個人ごとの統合IDと電話番号の紐付けを持ち、電話番号変更などを各端末・ユーザーに自動反映できる仕組み。があっても良いのではないかと思います。

これは、電話番号の重みを軽くする要因にもなるため、キャリアが仕掛けるには腰が重そうですが…、あと、その考えをさらに推し進めた先に LINE がある事を考えると、今さら感もありますが。

しかし、主要キャリアが足並みを揃えてそういうアプリをプレインストールする形にして、かつ、キャリアが販売しない端末にも自由にインストールできる形にすれば、意外と普及しそうな予感もします。

イメージ的には Twitter の鍵付きアカウント的な感じで、フォロー&承認。という形にして、フォローした人の電話番号変更が自動で自分の電話帳に反映される。みたいなイメージですかね。Android の電話帳とは別の電話帳になってくれると良いかもしれません。

なんなら既存のソーシャルメディアとの認証連携もしちゃって、顔アイコンとか出るとなお良いところです。

電話帳のクラウド同期。というと、「ドコモ電話帳」の「電話帳お知らせ機能」が似た感じですが、あれって確かドコモ端末以外に開放されているサービスではなかった気がするし、連絡先更新も、あくまでも通知ベースで自動変更じゃなかったような。

なんにしても、キャリア限定だとユーザーベースが少なくて話しになりません。

とかとか考えてると、そういうサービスも Google がやってくれればいいのにね。みたない話しにはなってくるので、やっぱり Over The Top は強いよねぇ。という結論にはなっちゃうわけですが。

電話帳の欠点は、自分で管理しなければならない事です。ある人にキャリアグレードの通話をしたい!と思った時に簡単に使える、統一的で洗練された現代的な方法がそろそろ用意されてもいい頃なのではないか。だってそういう時代でしょ。という風には思うわけです。

余談(関係無いようである話)

この10年で通信屋も段々と怪しい商売になってきた感があります。

どこのせい、誰のせい。聞かれれば、なんとなーく白い犬の風雲児がすっと頭をよぎりますが、あの会社さんは総務省をコケにしすぎて、当面、冷や飯を喰わされる予定となっておりますので、ぼちぼち、業界全体として顧客からの信頼を回復させる。そういう段になってきておるのではないか。というのが、私の思いでございます。

そして、ここに至るまでの音声通話料の切り上がり加減と、キャリアの音声通話が忌避されるまでになってしまった事、も、これまでの料金や制度でユーザーからの信頼を積み上げて来られたのか、という話しと無関係ではない。というのが、私の言いたい事です。

余談(関係無い話)

退屈な記事を最後まで読んでいただいた。という事で多少の情報も書いておきましょう。

仁義なきMNP合戦は、異例の行政指導により一応の決着を見た。かのように見えますが、ドコモは2014年3月末時点で、前年度末比+16%となる550万台の在庫端末を抱えています。

スマートフォン販売が想定ほど伸びなかったため。だそうですが、2月3月にあれだけのMNP合戦を繰り広げたにも関わらず、これだけの在庫を抱えている。という状況ですから、月々サポート以外の部分で再び、MNP優遇施策は期待できる…かも、しれません。

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