新電力に乗り換えるデメリットは?新電力が倒産した僕の経験談を書きます

 last update 2022年10月25日

長年、新電力を利用してきた私が感じた「新電力へ切り替えた場合のデメリット」についてまとめておきたいと思います。

電気は欠かすことのできないライフラインですから、値段が安いだけじゃ心配ですもんね。

特に、我が家では倒産した F-Power が電力供給する「きらめきでんき」を使っていたことがあり、強制的に電気需給契約を解約された経験があるため、経験者の視点からも新電力のデメリットも書かせていただきます。

新電力にしても電気の品質は変わらない

新電力未経験者が気にしがちな「ちゃんと安心して電気が使えるか」という部分ですが、実は、この部分は全く心配ありません。

1.送電品質は変わらない

送配電は新電力ではなく、地域電力会社が責任をもって行います。そのため、新電力にしても電気の品質は全く変わりません。

2.停電などのトラブル対応は地域電力会社が担当

停電時などの送配電に関するトラブル対応は、新電力ではなく地域の電力会社が行います。そのため、トラブル対応の品質にも変わりはありません。

詳しくは後で書きますが、経験談としても、ブレーカーより内側の宅内配線のトラブルに関しては、新電力でなく地域電力会社を使っていたとしても冷たいもので、一切助けてはくれません。

漠然とした安心・安全のために新電力を避ける。というのは、個人的には根拠のない考えで、実際には実のないことなのではないか、と感じています。

3.トラブル時の問い合わせ窓口は、新電力によって異なる

停電などの送配電に関するトラブル時の問い合わせ先は、「新電力」「地域電力会社」の2つのパターンに分かれます。

このうち、一次問い合わせ窓口を「地域電力会社」と案内している新電力であれば、基本的には従来と同じと考えてよいでしょう。

ただし、地域電力会社は送配電部分だけの担当ですから、契約状況の確認や電気料金の支払い滞納などに関しては新電力に問い合わせることとなります。

また、一次問い合わせ窓口を「新電力」としている事業者の場合でも、実際に、送配電トラブルに対応するのは地域電力会社です。そのため、内容によっては新電力の窓口に問い合わせたあと、再度、地域電力会社に電話をする必要がある場合も出てきます。

いずれにせよ、ブレーカーまでの送配電がらみのトラブル対応はすべて地域電力会社が行い、新電力は契約と支払いだけを担当することに変わりはありません。

ちなみに、新電力切り替え後も、地域電力会社は契約情報をちゃんと持ってくれているので、電話しても誰のことだか分からない、ということにはなりません。

4.太陽光発電の売電とも併用可

あまり知られていないかもしれませんが、新電力からの買電と、太陽光発電の売電は両立できます。

ただし、一部の新電力事業者では太陽光発電との併用をお断りしているため、申し込み前に確認しておくと良いでしょう。

余談ですが、太陽光発電で発電した電気は、地域電力会社だけでなく新電力に売電することも可能で、その場合、売電単価が高くなるケースがあります。ただし、現在は一部地域を除いて、そのほとんどが新規受付を終了してしまっている状況です。

地域電力会社と新電力との違い・デメリットは?

電気の品質やトラブル対応は従来と変わらない新電力ですが、支払い方法や使用量の確認、契約変更などの手続きは、地域電力会社との違いが少なくありません。

1.紙の請求書・領収書・検針票は無料では発行されない

新電力の多くは、紙の請求書、領収書、検針票を一切発行していない場合が少なくありません。また、発行している場合でも有料だったりします。どうしても紙が無いと困る人は、事前に確認しておくとよいでしょう。

また、新電力では、料金や電気の使用量をWEB上のマイページやアプリなどで確認するのが一般的です。そのため、スマホ・インターネット料金を滞納して回線を止められるタイプの人には向いてなさそうです。

WEB 上のマイページの情報保存期間が限られている場合もあります。保存期間が短いと困る人は、確認しておいたほうが無難でしょう。

2.支払いはクレジットカードが基本

電気料金の支払い方法にも違いがあります。

従来の地域電力会社では、クレジットカード払いのほかに、コンビニ払いや営業所での現金支払いなどを選択できました。しかし、新電力ではクレジットカード払いのみの事業者が多いです。

与信上の理由からクレジットカードの利用に制限がある人は、注意しましょう。

3.フリーダイヤルの電話窓口がない場合も

新電力の事業者によっては、問い合わせ窓口にフリーダイヤルの電話番号が用意されていない場合があります。

新電力では契約から利用量の確認、問い合わせまでをネットで完結できるケースが多いです。しかし、万が一、電話で問い合わせる必要がある場合、通話料が掛かるかどうか、は気に掛けた方が良いでしょう。

特に、問い合わせ先がナビダイヤルしかない場合、スマホの通話定額オプションの対象外となってしまい、長時間の通話をした場合は高額な通話料を請求される可能性があります。

4.電話応対の品質が悪い場合がある

新電力事業者によっては、問い合わせ窓口の電話がつながりにくかったり、電話応対の品質が悪いケースもあります。

基本的にはWEBで完結できるケースが多い新電力ですが、込み入った問い合わせや契約変更時などに何十分も電話がつながらないと、嫌になってしまうかもしれません。

ただし、電気が安く買えればそれで良い、とか、問い合わせはネットで良い、と割り切れる人には、大して気にならない問題かもしれません。

5.最低利用期間と違約金が設定されているケースが多い

新電力では、多くのケースで最低利用期間が設定されており、期間内の解約で違約金が発生する場合があります。

最低利用期間より後の解約なら違約金が発生しないケースもありますが、中には、スマホのように長期契約が自動更新され、更新月以外の解約時には違約金が請求されるケースもあるので要注意です。

基本的には、違約金がゼロの事業者や、違約金が安い事業者を選ぶのが良いとは思いますが、中には、違約金は高いが料金が安い事業者もあるので、一概に違約金が高いとダメ、というわけではありません。バランスを考えて、長期契約しても後悔しない会社かどうかを考えて契約するのが良さそうです。

6.事業撤退する可能性がある

2021年秋から2022年にかけて話題となった JEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格急騰は、自前の発電所を持たず、JEPX からの調達を主とする新電力各社の経営を危うくさせました。

この影響を受け、我が家で契約していた「きらめきでんき」の電力供給会社「FPS」も低圧事業から撤退。2022年12月までに別の電力会社と契約しなければ、我が家の電力供給が止まる事態となりました。

この際、電気が止まる、という重大な事態にもかかわらず、告知は一通のメールが飛んできただけで一切の郵送物が送られてこなかった、というのは特に皆さんに注意喚起しておきたいところでして。

これは例えば、私にもしもの事があり、家族にメールを読める人がいなければ、家族が知らない間に電気が止まっていた可能性がある、ということです。

個人的には、家族全員がネットなりメールなりを使えて、さらに、家族の共有メールアドレスで契約する、などの対策があることから、あまり重大と捉えてはいませんが、人によっては重く受け止めるリスクかもしれません。

7.「スマートメーター」が必須

新電力との契約時には、検針コストが掛からない「スマートメーター」が必須です。

「スマートメーター」は従来のアナログ電気メーターの代わりとなるもので、設置費用は無料。交換は地域電力会社が行います。

2022年9月現在、スマートメーターの普及率は全国で90%を超えていますが、九州・沖縄・四国・北陸・東北・北海道ではそれよりも普及が遅れている状況。

すでに、多くのご家庭で切り替え作業は不要な状況ではありますが、スマートメーターへの取り換えが必要な場合、開通日まで2週間程度の時間が必要になる点は意識しておく必要があります。(これはデメリットとは言えないですね)

電気料金があまり安くない新電力と燃料費調整額に注意

2021年秋から2022年にかけ JEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格が急騰した影響から、格安系の新電力は新規申込みを停止しているケースが少なくなく、新電力の料金面でのメリットは以前と比べて縮小しました。

特に、電気料金が12%以上安くなる新電力は、私の認識ではまず無い(か、あったしてもかなり珍しい)状況です。

また、最低利用期間と違約金があるにも関わらず電気料金があまり安くならない新電力や、グループ会社のポイントしか付与されない新電力も存在しています。そういった会社さんは、個人的にはあまりお勧めできないことが多いです。

さらに2022年以降、燃料費調整額の上限を撤廃した新電力が少なくないのも重要な判断材料となってきます。

地域電力会社でも同様に燃料費調整額の上限撤廃の動きが出てきているため、一概には言えないものの、電気料金の比較は正価だけでなく、燃料費調整額も考慮に入れることが重要な時代となりました。

結果、新電力に切り替えるメリットはあまりない、とか、市場連動型の料金体系の新電力では、請求月によっては料金メリットがそもそも無い、というケースもあるため、注意が必要です。

では、どんな新電力がオススメか、という話ですが、完全に私見にはなりますが、自前の発電設備を保有しており JEPX からの調達比率が低い新電力。特に、発電量の多くが火力ベースとなっている現在では、歴青質混合物より高効率な LPG ベースでの発電量が多い新電力を選ばれると、サービス継続性、および、料金の安定性が高まりそうだ、とは感じるところです。(2022年10月現在)

新電力にしても送配電の責任範囲は変わらない

新電力に切り替える前の話ですが、我が家では、外構業者の施工不良が原因で微妙に漏電していたことがあり、保護装置が働いてブレーカーが飛びまくっていました。

その際の経験談から言わせていただくと、ブレーカーより宅内側の電気配線の問題で地域電力会社に電話したところで、地域電力会社の担当者は何もしてくれません。一般論的な質問には答えてくれますが、問題の切り分けはこちらがすることになりますし、何らサポートは得られないと思ったほうが良いです。

こういう場合の地域電力会社のスタンスは明確で、「そういうのは、電気工事業者にお願いしてね」というのが基本なのです。

ですから、僕は「新電力に切り替えるとサポートが不安」という漠然とした不安は、明確な勘違いとしか思えなくて。

地域電力会社は、ブレーカーを境にしっかりと責任範囲を決めているので、どこから電気を買っているのかによって、その責任範囲が揺らぐことはないし、仮に、地域電力会社から電気を買っていたとしても、サービスで宅内配線の原因まで調べてくれる、なんて事はないわけです。

繰り返しますが、送配電の責任範囲は、新電力にしても変わりません。ただ、どこから電気を買ってくるか、そこが変わるだけです。

そう考えると、僕らももっとドライに考えて良いと思うんですよね。

※ 2022/10/7 過去記事更新。新記事扱い。

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