仮想通貨「Ethereum」高騰の影響で、AMDのRadeon RX 580/570が世界的に品薄

Photo Golden Bitcoin (new virtual money )

このところ、AMD の GPU「Radeon RX 580 / 570」が世界的に品薄となっていますが、国内でも、ネット通販での在庫切れや、店頭での大量購入が目立つようになってきました。

今回の GPU 品薄の背景には何があるのか。調べてみると BitCoin などの暗号通貨の高騰が浮かび上がってくるので、簡単ですがまとめさせていただきます。

仮想通貨、といえば BitCoin が有名ですが、それ以外にも、LiteCoin や Ripple、NEM、Ethereum など、実に多くの仮想通貨が存在しています。

そんな中でも、AMD Radeon RX 580 / 570 で主に採掘されているのは、「Ethereum(イーサリアム)」という、BitCoin の次に時価総額が大きい仮想通貨とみられます。

仮想通貨は、取引所での購入や、誰かに送金してもらうことで入手できますが、それ以外にも、コンピュータで難しい問題を解く「採掘(マイニング)」によっても手に入れることができ、その採掘に AMD の GPU が利用されているわけです。

多様な仮想通貨は、それぞれ異なる特徴を持っており、取引スピードの速さをうたう仮想通貨もあれば、通貨以外の用途にも使えるもの、また、独特の採掘特性を持ったものなど、様々です。この多様性が、仮想通貨間に競争原理をもたらしており、恐らくは仮想通貨全体の生存確率を高めているのだと僕は考えています。

少し話が逸れましたが、GPU 品切れ騒動の原因となっている「Ethereum」は、そんな中でも、採掘用 ASIC などの専用回路を開発しづらい、という事を特徴のひとつとする仮想通貨として位置づけられており、すでに、スマートフォンやPCのような汎用コンピュータでは採掘採算性が取れなくなって久しい BitCoin とは対象的に、Ethereum では、現在においても採掘高速化の手段として PC + GPGPU(GPUによる汎用演算)が現実的に有効とされているわけです。

そして、採掘作業はコンピューターをフル回転させるため、その電気代もバカにならなくなってきます。

採掘採算性を高めるには、総発電量に占める石炭火力比率が高く、電気料金が安いことで有名な南アフリカや中国などでの採掘が望ましいのは当然としても、消費電力効率、いわゆるワットパフォーマンスの高いシステムの構築もそれと同じくらい重要で、採算性に大きく響いてくるわけです。

その点、AMD の Radeon RX 4xx や 5xx は、ワットパフォーマンスの高さが特徴ですので、採掘者(マイナー)達から特に好まれて使われている。だから、AMD の GPU が品切れになる。というわけ。

では、どうして Ethereum が、今、こんなにも注目されているのでしょうか。

少しそれますが、仮想通貨の取引所では、仮想通貨とドル・円などの通貨との交換だけでなく、仮想通貨同士の取引も行われています。

つまり、仮想通貨同士にはつながりがあるから、ここ最近の BitCoin の急騰の影響を受けて連れ高している、という説明もできるのですが、それ以上に重要なのが、Ethereum の対 BitCoin 相場の急騰でしょう。

Ethereum は、最初から決済手段として設計された BitCoin とは異なり、スマート・コントラクトを中心とし、P2Pネットワーク上で1つの仮想コンピュータを稼働させられる複雑な設計となっています。

そのため、その活用方法に広がりがある、という部分を材料に、思惑を集めているのではないか、というのが僕の見解です。

ただ、Ethereum の仮想マシンの実行性能は極めて遅く、その動作にも制約が少なくありません。

個人的には、クレジットカードの VISA が、ピーク時毎秒4,000トランザクションをさばき、さらに、設計上のキャパシティーは56,000TPSにも上るとみられる中、3桁以上トランザクション性能で劣る Ethereum や BitCoin が解決しなければならない問題は少なくないと思います。

しかし、とりあえず今は、そういった決済性能に関する問題点に関しては市場は重視しておらず、遅いけど決済できる電子的資産、という位置づけでプライシングされているのが実態のように感じます。

さて、で、本題である 2017年6月5日時点における、Ethereum 向け仮想通貨「Ether」の採掘採算性ですが、Radeon RX 580 と日本国内の電気料金をベースに試算すると、以下の通りとなりました。

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RX 580 を4枚挿しのお化けマシンで、消費電力700W、パフォーマンスは100MH/sとすると、月間2.32ETH採掘できて、電気代のみを経費として計算した場合、月間420ドルのプラス。という感じ。

RX 580 は1枚300ドル前後ですから、元を取るのに3カ月近くかかる計算です。もちろん、Ether の価値次第では大損になりますし、採掘難易度の向上や Ether にまつわるその他のリスクもありますから、普通の人が手を出すかは、なかなか難しいところでしょう。

ただ、電気代が安い国ならもっと早期に回収できる計算となりますし、問題が起これば GPU を売却して採掘をストップする手があることも考えると、なるほど、店頭から GPU が消えるのもうなづける相場状況なのだな。とは思うわけです。

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