last update 2020年9月4日 19:02

【恐怖指数】「VIX指数」とは一体何なのか

米国株が大きく下がった翌日、よくニュースなどで「VIX(Volatility Index)」という単語を見かけませんか?

別名「恐怖指数」とも呼ばれる「VIX指数」は、その名のとおり「投資家の不安心理を表す指数」と説明されたりもします。

ただ、「恐怖の指数化」と聞いても、それが具体的に何を表しており、どう算出されるのか、まではピンと来る方は少ないのではないでしょうか。

というわけで今回は、VIXに興味はあるけれども実態が良く分からない、という方向けに、数式を使わず、できるだけ簡単に「VIXとは何なのか」を解説します。

VIX指数は「S&P500(SPX)の変動率の市場予想」

結論を言ってしまうと、「VIX」とは「SPXの将来変動の市場予想」を指数化したものです。

ここでいう「SPX」とは米国の「S&P500」、つまり、日本でいう日経平均(日経225)のような株価指数です。「VIX指数」は、市場がその30日後までの変動をどう見ているか、を表したものになります。

「VIX」は、その数値が大きいほど将来の変動が大きく、小さいほど変動が小さい、と市場が見込んでいる事を表しています。

また、相場の下落時は上昇、平常時・上昇時は低く推移する傾向が多いのも事実です。

さて、そんな「VIX」ですが、いったい何からどう算出されているのでしょうか。まさか、市場参加者へ「株価の先行きが不安ですか?」なんてアンケートを毎日取っているのでしょうか?

ということで、ここからは「VIXの背後にあるモノ」「VIXとは何者なのか」についてお話をしていきましょう。

SPXのオプション価格から算出されるVIX

オプションとは何ぞや?

VIXを理解するには、まず、オプションという金融派生商品について、ざっくりと理解しておく必要があります。

「オプション取引」というのは、「未来の決められた日(オプションのタイプによってはそれまでの任意の日)に、ある金融商品をいくらで買う権利、または、売る権利」を売買するものです。

正直、これは直感的には理解しづらい概念ですので、ここでは単純に「株の保険」と捉えておくと理解しやすくなると思います。

未来のある日に、株価がいくら以下に値下がりしていたら、権利行使価格とその時点での株価との差額を受け取りたい、とか、逆に、いくら以上まで値上がりしたら、その分の差額を払います、といった契約。この契約に価格を付けて市場で取引しているわけです。

雑に言えば「株の値下がり保険」「株の値上がり保険」といった感じでしょうか。

そういう保険の売り手と買い手とが保険契約を売買している、それがオプション市場だと思っていただければ、そう大きく外してはいません。

オプションのIV(インプライド・ボラティリティ)とは

さて、ここであなたは考えます。今、ここに1株1500円の銘柄があったとして、これを1カ月後に1500円で売れる権利、その適正な保険料はいくらなのか、と。

この問題を解決してくれるツールが、金融工学の産物であるプライシングモデルです。

このプライシングモデルに、非危険利子率・配当等、残存日数、権利行使価格、そして今回触れるIV(インプライド・ボラティリティ)などを入れてやると、先の例えでいう保険料、つまり「プレミアム」を加味したオプション価格を算出できます。市場参加者はそれを参照して、「保険契約」とも言えるオプションの価格形成をしているのです。

で、ここからが本題。

このプライシングモデルの中でも、とりわけ特徴的であり、かつ、論理と現実世界との橋渡し役となってくれるのが「IV(Implied Volatility)」です。

この「IV(インプライド・ボラティリティ)」は、日本語では「暗黙の変動率」と翻訳されることもある概念。そう、オプションのプライシングモデルには「未来の株価変動の見込み」を入れる変数が用意されているのです。

「IV」は、市場参加者(それが人間であるとは限らない)が決めます。そのため「オプション取引は、実質的にIVを売買している」と揶揄されることもあるほどです。(これについては冗談めいたものと捉えておいてください。実際にはギリシャ指標の重要度が高い取引です。)

オプションの世界では、「相場が荒れる → IVが高い → プレミアム(保険料)が高い」「相場が静か → IVが低い → プレミアム(保険料)が安い」、そういう値動きをする。ここではその程度の認識があれば十分です。

VIXはS&P500オプションのIVから算出される

もう、ほとんど答えに辿り着いている気もしますが、そろそろ話しをまとめましょう。

市場のオプション価格からは「IV」、つまり、「株価の保険契約(みたいなもの)」が前提としている、「30日後までのSPXの変動率」を逆算できます。

例えば、先日のように米国市場でS&P500(SPX)が大きく下げると、SPXオプションのプレミアム(保険料)が跳ね上がります。保険料をアップしないと、保険の引き受け手が現れないからです。

暴落時のオプション価格から「IV」を逆算すれば、投資家達が、今後の株価の変動率をかなり高く見積もっている、つまり、荒れた相場が今後も続くと考えている事が分かるわけです。

実際のオプション市場では、例えば1つの SPX という指標に対して、多数の権利行使価格が設定されています。

SPXオプションの権利行使価格は5ドル刻み。(SPX=約2351時)

そして、そのそれぞれの権利行使価格についてIVを逆算し、ある数式で束ねて指標化します。

こうして算出される数値が「VIX(Volatility Index)」です。

だから、VIXとは「株の保険料の指数」と言い換える事ができるし「保険料が高い=投資家が株価の先行きに不安を持っている」とも言えますから、世間では「恐怖指数」なんて呼ばれるわけです。

奥深いボラティリティの世界

ボラティリティの世界は奥深く、デルタ・ガンマ・ベガ・セータといった基本的なギリシャ指標、そして高次ギリシャ指標、コール・プットのIVの歪みを表すスキュー(Skew)、スマイルカーブ、ボラティリティ・クラスタリングなど、他にも重要な要素・概念がてんこ盛りです。

また、オプション価格からのIV算出は解析的には解けず、反復法を用いて求根する必要があるなど、算数的な面白さも湛えています。

個人的には「VIX」を「恐怖指数」と呼ぶのは、VIX をある1面からしか捉えていない感じがして嫌いなのですが、日本語圏のニュースサイトでは恐怖指数というキーワードの方が良く使われるので、馴染みやすさから阿ってみました。

なお、VIXは米国のCboeが算出する指数ですが、我が国にも「日経平均VI」という似た指数が存在します。こちらは日経225を原資産とする日経225オプションから算出されている指数です。

とはいえ、金融派生商品の幅や流動性という観点では、我が国のそれは米国に到底叶うレベルではありません。

米国は紛れもないオプション先進国であり、指数のみならず、個別株、ETFに至るまで、オプション取引が盛んな国なのです。

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