last update 2020年11月10日 19:11

僕が「GoPro HERO9」の購入を見送った理由と手振れ補正の未来

今さらですが、僕がアクションカメラ「GoPro HERO9」の購入を見送った理由について、簡単に書いておきます。

前提として、僕は「HERO7」を所有しています。なので、そこから乗り換える理由はあまり無いなー、と感じた理由を主に説明していきます。

今どき、GoProの画質では厳しい

他でも散々言われ続けてきた事ですが、まずはこれが一番の理由です。

スマートフォンのカメラに手ブレ補正機能が当たり前に搭載されるようになってずいぶん経ちましたが、最近は一部機種のスマホのカメラにも、GoPro には無い光学手振れ補正が付くようになりました。

アトラクション系の用途では依然として GoPro の価値は残されてはいるものの、街歩きや普段使い程度なら、敢えて GoPro を使わずとも、手持ちのスマホでも十分な手ブレ補正が得られるようになってしまったわけで、もはや、抗いがたい時代の流れを感じちゃうわけです。

また、小型で扱いやすいスマホ用ジンバルの選択肢が増えたことも、GoPro の手振れ補正の有難みを大きく削ぐ要因となっています。というのも、ジンバル+スマホの組み合わせなら、GoPro や単体スマホが苦手とする、暗所での手振れ補正が使い物になるシーンがかなり増えるからです。

もともと手ブレ補正を抜きの単純な画質でも、どう考えても GoPro よりもスマホの方が上になって久しい、というのも厳しい話。GoPro は手ブレ補正と画角の掛け合わせでの強みこそ残ってはいるものの、トータルの画質で見ればスマホの方が上、とか、許容範囲内、というシーンは本当に多く、さらにスマホならいつでも必ず持ち歩いている、というアドバンテージがあるわけです。

GoPro の売りだった広角レンズも、最近のスマホは広角対応が珍しくなくなりました。もちろん、標準画角と比べれば画質が落ちてはしまうものの、少なくとも「広角が無くて困る」というシチュエーションは激減しました。

ミラーレス一眼をお使いの方なら、ソニーのEマウント向け超広角レンズの秀作が出揃ったこともインパクトでしょう。結果、画質なら一眼、ライトユースはスマホ、と使い分け、3台目のカメラとして GoPro を持ち歩く理由が消失しつつある、というのが僕の見解です。

画作りの流行の変遷も無視できません。GoPro は相変わらずのパンフォーカスですが、最近のスマホのカメラは、ボケ味もある程度表現出来るのが当たり前となります。

そんなこんなで「GoPro でなければいけないシーン」というものが、じわじわと、そして確実に減り続けているのです。

僕の街歩きの定番装備も、今では「α7S III」1台だけでいいかなー、という感じになってきていますし、もう1台持つとしても、先日発売されたばかりの「DJI Pocket 2」かな、という感じ。一眼を持っていない時ならスマホのカメラだけでも十分。そんな時代になった気がします。

今でも GoPro が活きるシチュエーションはあります。ただ、それは昼間の外出先で、どうしても超小型、かつ、強力な手振れ補正が必要なシーンくらいで、それ以外ではユースケース自体が消滅しつつあります。

僕自身が夜型で暗所での撮影が多いのも GoPro との相性が悪い理由かもですが、海外旅行先でなら GoPro の手軽さは捨てがたいものの、日常生活プラスαくらいなら、敢えて GoPro を選択する理由は見当たらなくなりつつある気がするのです。

ジャイロスタビアプリによるポスプロでの手ブレ補正の時代へ

さらに、大きいのが、ポストプロダクション向け手ブレ補正ソフトの存在です。

例えば、GoPro HERO7 + ReelSteady Goを使えば、後からでもかなり強力なジャイロスタビを使えるだけでなく、(本体側の機能としては)HERO9 で初導入された水平維持機能まで使えます。そりゃそうだ。GoPro はその機能が欲しくて ReelSteady を買収したんだから。

GoPro 側のファイル分割ラインである 4GB を超える長回しで水平維持を使いたいというなら、敢えて GoPro HERO9 を選ぶ意味もあるでしょうが、GoPro を肩マウントする僕からすると、本体サイズが小さいことの方がメリットは大きい、という判断になってくるわけです。

ちなみに、ソニーのミラーレス一眼カメラ「α7S III」でも、Catalyst Browse によるポストプロセスでのジャイロスタビライゼーションが可能です。ただし、2020年11月6日現在の最新バージョンでは H.265 や 4:2:2 10bit 動画には未対応。次期バージョンではこの問題は解決するとみられ、そうなればポスプロで手間を掛けられる用途なら、ジンバルはともかく、アクションカメラの重要度はさらに下がってくることでしょう。

というのも、この手のいわゆるポスプロでのジャイロスタビ処理は、必要十分なフレームレートが稼げ(≒光量・感度が十分であり)、かつ、撮影時点で手振れ補正せずともきちんと合焦できる前提であれば、カメラ本体内での手ぶれ補正よりも品質が高くなるケースが多いからです。

現状、ポストプロダクションでのジャイロスタビ系アプリは、旧来の画像解析ベースの手振れ補正では到達できない品質を求める一部の層しか使っていませんが、将来的には、裾野が広がってくるのではないかと思えてならないのです。

持てる荷物に限りがあり、何と何を持っていくのか、という競争の中、このような未来は GoPro だけでなく、ペイロードが小さく安定性が低い一部のジンバルなどの必要性すらも無くしてしまう破壊力を秘めています。

こうして GoPro は本来の、つまりニッチであるアクション用途や超小型カメラが必要とされる用途以外では、競争から離脱してゆくだろうと見ています。

GoProの偉大さは依然としてある

繰り返しますが、今でも GoPro が必要とされるシーンは確実に存在し、その分野において偉大な存在であることに変わりはありません。

また、これから買う方が、敢えて古い機種を選ぶ理由もないでしょう。

このサイズ・重量で、この画角で、水平維持機能もあり、これだけアクセサリー類が充実しており、かつ、ポスプロでのジャイロスタビと水平維持の手段が用意されていて、これだけ LUT・IDT が整備されているアクションカメラは他にはありませんから。

いかに DJI 製ジンバルがスポーツモードを搭載しようとも、ジンバルは所詮ジンバルです。アクションカメラでないと使い物にならないシーンはどれだけでもあります。

また、ポストプロダクションでのジャイロ情報を利用した手振れ補正も、現状、私の知る限り、多コアの CPU・GPU をフル活用できるものは無い状況ですので、どうしても時間が掛かってしまう、という欠点があります。

そういう全体を俯瞰すれば依然として「GoPro HERO9」の存在価値はある訳ですが、これを買わなければならない理由は、どんどん狭まっている、というのが私が本稿で言いたいことになります。

アクション用途であれば、GoPro のサイズ感と総合力は相変わらず優秀です。ここまで書いておいてなんですが、僕も、撮影を意識したくない用途のために、将来、HERO 9 への買い替えを検討する事はあるかもしれません。暗所でさえなければ、正直、ソニーあたりが RX0 シリーズの AF-C 対応版を出してくれれば、そして、超広角対応してくれればそれでいいだけの話のような気もしており。多分、そんなのが出たら、あっと言う間にそちらになびく自信があるんですが、恐らくは、あのセンサーサイズでは、何らかの技術革新でもない限り、暗所での手振れ補正は厳しいのではないかと思うんですよね。

スマホの画質向上に追われ、カメラ専用機はその価値を大型センサーに見出しつつあります。そんな時代、正直なところ、GoPro には頑張って1インチセンサーを載せて欲しかったわけですが、センサーサイズを大きくすれば、代わりに捨てなければならない事も増えるわけで。

GoPro は本当に難しい立場に追いやられているように思えて仕方がないのです。

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